2022/8/17
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アルコール依存症は適切な治療を受けることで回復が可能 |
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「お酒が好き」というのと、「お酒を辞められない」というのは違います。アルコール依存症とは、お酒を辞めたくても自分の意思では辞められない状態にあり、習慣的に繰り返された多量飲酒によって、脳がハイジャックされたような状態にあります。 アルコール依存症の患者さんは、お酒を飲むことは良くないことだと理解していても、脳に異常が起きており、お酒を飲むことを辞められないのです。そのため、自分の意思だけではお酒を飲むことをコントロールできません。 アルコール依存症は患者さんの意志の弱さやだらしなさなど、本人の問題が原因ではありません。アルコール依存症は誰でも罹る可能性があり、病気であるという認識が、本人にも周囲にも必要になります。 そして最も重要なことは、アルコール依存症だから仕方ないと諦めてしまうことではなく、アルコール依存症は適切な治療を受けることで、回復が可能な病気であることを理解することです。そのため、早い段階で診断を受け、早く治療を始めることが重要になってきます。 しかし同時に、アルコール依存症は、患者さんだけの力で回復することはとても難しい病気であると理解する必要があります。
まずアルコールからの離脱症状や、多量のアンコールを摂取したことによる肝障害などの併存疾患の治療を行う「解毒期」、アルコールを摂取しない社会生活を送るための訓練をする「リハビリテーション期」、アルコールを摂取しない状態を維持し、再発を予防し続ける「アフターケア」というものです。 アルコール依存症の患者さんが断酒を始めると、体内のアルコール濃度が下がってくることから!様々な自律神経症状や、不安や怒りなどの情緒障害、手の震え、冷や汗、幻覚・幻聴などの様々な症状が現れます。 これを離脱症状と言い、断酒を始めた初期の段階では、離脱症状に注意する必要があります。早期における離脱症状は、飲酒を止めてから数時間で現れ始め、手や全身の震え、冷や汗、不眠、吐き気や嘔吐、血圧の上昇、不整脈、幻覚・幻聴など様々な不快な症状が現れます。 後期における離脱症状は、飲酒を止めてから2~3日で現れることが多く、幻覚や見当識障害、興奮や不安、発熱、発汗、震えなどが現れることが多くあります。患者さんにとって離脱症状は不快感であり苦しいもので、これらの症状から逃れるためならお酒を飲んでいたほうがマシに思えることから、さらにお酒を飲み続け、今度は以前より多くのアルコールを摂取するようになってしまいます。 断酒を始めた初期の段階では、離脱症状に耐えられず、再びお酒を飲んでしまわないよう、周りの人のサポートが必要です。アルコール依存症の患者さんにとって、お酒を飲まない状態を続けることはとても大変なことです。患者さんは、お酒を飲むことで起きる問題を理解していることが多く、それでも辞められない状態にあります。そしてお酒を辞めることは、自分が依存症であることと認めることになり、これまでの生き方を覆すことにもなります。 「人間関係」が大切であり、「自分自身」を変えていくこと、自分のためだけではなく、周りや社会のために、周りや社会と共に生きていく価値を見出すことなど、これまでの行動や物事の捉え方を変える必要に気付くことが、断酒と同じ程度必要とされ、第一とされています。このため、単に「お酒を飲まない」ことに耐えるのではなく、抗酒剤や適切な精神安定剤や睡眠薬を用いた薬物療法や、カウンセリングなどの心理療法を受ける必要があります。 お酒を飲まないことに耐えるのではなく、お酒を必要としない生活に変えることを目標に、断酒を始めましょう。繰り返しになりますが、アルコール依存症は治療が必要な「病気」です。そして治療を受けることで回復が見込めます。 患者さん本人や周りの誰かが悪いわけではありません。必要な治療やサポートを受ける必要があることを患者さん本人も周りの人たちを理解しましょう。 |
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