2022/8/17
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脳や神経の回復には時間が掛かる |
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日常的に絶え間なく多量のアルコールを摂取していたアルコール依存症の人が、断酒を始めると様々な症状が現れます。しかしその後には、確実に効果を得ることができます。 断酒を始めると、6時間程度で体と心に変化が現れます。しかし変化の程度や過程は、どのくらいの量と期間にお酒を飲んでいたかによって異なります。 断酒から12~24時間経つと、冷や汗や動悸、不安、幻覚や幻聴などの離脱症状が始まります。これもまた、全ての人に起きる症状とは言えず、その人によって、出る症状も様々ですから、周囲の人は本人の状態をよく観察し、危険がないかなどを注意深く観察しましょう。 この時期を医療機関の元で過ごさない場合には、より注意が必要です。離脱症状が起きる原因は、アルコールによって脳や神経の働きが影響を受けたためであると考えられています。これを断つことで、一時的に脳や神経が戸惑いを起こすのです。 アルコールを摂取すると、興奮性神経は抑えられ、抑制性神経が強められます。これがいわゆる酔っ払った状態というものです。アルコールは脳の働きを抑えるため、お酒を飲むと幸せな気分になったり、普段は神経質で気弱な人が、大らかになったり、いわゆる気が大きくなるというのは、この働きのためです。 これは通常、適量や適度な間隔の飲酒であれば問題ないとされ、社交の場において、しばしば快楽を増強させるものとされています。しかし、アルコール依存症の人は、この歯止めが利かない状態にあります。 断酒を始めてから24~48時間(1−2日)経つと、興奮状態に陥ることがあります。アルコールの摂取によって得られた幸福感や安心が不足し始めるからと考えられています。断酒を始めても再びアルコールを手にすることが最も多い時期に入ります。多くの人は、離脱症状の苦しさに負けて、お酒を飲む苦しさを選んでしまうのです。 これを過ぎた3日後からは、食欲がなく、胃腸の調子が悪くなったりますまたそれまで幸せな気持ちや安心感をもたらしてくれたアルコールがないことから、しばしば不安感に襲われるようにもなります。 これを過ぎて、断酒から1週間が経つ頃には、やっと体力自体も回復を見せ始め、体や心に起きている変化を感じることができるようになります。この頃になると、まとまった考えを持つことができたり、建設的な話し合いや対応を少しずつ考えられるようになります。 しかしまだ情緒の変動は激しく、体調も優れないこともしばしば起き、その度に患者さんは、「やっぱりお酒を飲みたい」と思ったり、「お酒を飲んでいたほうが楽だ」という葛藤を抱えるようになります。 断酒を始めてから4週間(1ヶ月)が経つと、体が元通りに戻る感覚を感じ始める人が多いようです。ご飯を美味しいと感じるようになるのもこの頃で、悪夢を見なくなったり、寝付きが良くなるなど、睡眠の質の回復も見られ始めます。 このように断酒しても、すぐに良い効果が得られるわけではありません。アルコールによる脳や神経の回復には時間が掛かります。 また断酒は、アルコール依存症の患者さんにとって、とても苦しい治療です。さらに効果が得られたからと言って、再びお酒を飲んでいいわけではなく、断酒はほぼ一生続きます。その間、患者さんは少なからず葛藤を抱えます。 しかし、忘れてはならないことは、飲酒を続けることより、断酒をした方が確実に楽になり幸福になれるということでしょう。 |
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