2022/8/30

再飲酒防止を目的としている薬

 

  再飲酒防止を目的としている薬

 

 アルコール依存症を治療するための基本は通院、自助努力ですが、さらに補うものとして薬を使った薬物療法があります。薬物療法は再飲酒防止を目的としていて、日本で処方される薬には主に2種類、3薬剤あります。

 


    1、抗酒剤【製品名:ノックビン、シアナマイド】


 これらの薬を飲んだ後にお酒を飲むとお酒が弱い人がたくさんのお酒を飲んでしまった時のように顔が赤くなったり、吐き気を催したり、頭が痛くなったりします。この薬自体に「お酒を飲みたくない」と思わせる直接的な作用があるわけではありませんが、頭痛、吐き気を繰り返し引き起こすことにより「お酒を飲む=楽しいこと、気持ちがいいこと」という感情がなくなり、気分が悪くなるのでお酒を飲むことが苦痛になるのです。

 しかしこの薬は誰でも利用できるわけではなく、心臓、肝臓の機能が低下している人や妊婦さんには使用することができません。またアルコールを微量でも含んでいる食べ物や飲み物、例えばお酒の入ったケーキ、チョコレート、栄養ドリンク剤でもお酒を飲んだ時と同じような症状が出ることもあるので、摂取するものについては注意が必要です。

 

 

  
   2、 飲酒欲求軽減薬【®レグテクト】


 脳に直接的に作用し、「お酒を飲みたい」という飲酒欲求を抑える作用があります。
欧米では20年以上前から使用されてきた薬剤ですが、日本では2013年5月に承認され保険適用となりました。アルコール依存症の人はちょっとしたきっかけで「お酒が飲みたい」という欲求が出現してそれがコントロールできないことが問題ですから、その作用を抑えることでかなりの効果が期待できます。この薬を飲んだ後に飲酒してしまったとしても、抗酒剤のような不快な反応が出現することはありません。

 抗酒剤は肝機能障害がある人には使用できませんが、飲酒欲求軽減薬はそういった特徴はありません。ただし副作用として下痢(14.1%)、お腹の張り(1%)、悪心(0.5%)といった症状が現れることがあるので、服用には注意が必要です。この薬は断酒をしている人が服用すると断酒率が上がるものの、断酒ができていない人に対してはあまり効果がありません。そのため服用はきちんと断酒をしていることが前提となっています。